「又、書くことにしました」の続きです。
このお家には、初めて、往診しました。年齢は15歳、マルチーズ、オ
スです。
依頼された理由は、口の中に腫瘍ができています。今までかかって
居られた先生のお話では、手術はしない方が良いとのことですが、外
に治療の方法がないとのことです。何かしてやれることないか>

　私が往診したとき、靴を脱いだ時に、「あれ、鳴き声が聞こえません
ね」といいました。「もう、年ですから寝てばかりです」と云われて、お
部屋に通されましたが、私の足許で寝ているのに、私は気が付きま
せんでした。見まわしましたが、いませんので、どこにいるのですかと
お聞きするとここですと、云われました。
　これで、耳が聞こえないか、熟睡していたかが分ります。

　どうやら、両方であったようです。
目は白くなって、殆ど見えていないようです。懐中電灯で照らします
と、片方は、全く瞳孔(瞳の部分です)が動きません。片方は、ゆっくり
ですが、動きますから、光は感じているようです。手を前にもっていき
ますと、ゆっくり持っていきますと、瞼をすこし動かしますから、何かが
近づいてきたことは分るようです。

ご依頼の口の中の腫瘍です。舌の下に、それほど大きくはありませ
ん。豆粒の様な腫瘍ではなく、べったりついているように盛り上がって
います。　その端の一部は、私たちの唇に相当する所まで達してい
て、普通ですと、ピンク色をしている口内の色は、赤くみえ、炎症を起
こして腫れている様子が見えます。
　私たちの唇で表現しますと、唇が脹れて少し、赤くなって、外に目く
れている感じです。

　全体の様子は、食欲はあります。毎日、3〜5センチ程の便をしま
す。おしっこの回数は、多いですが、自分でペットシーツの所まで行き
ます。
　前の先生の指導だと思いますが、ペットシーツ・水のみ器・食器は、
離しておいてあり、犬が少しでも、多く歩くようにしてあります。
　これで、先生は年配の方で、適確な指導をされる方であることが分
ります。(此の事から、レントゲンの結果の表現が、飼い主さんが聞き
違えられたのではと判断しました)

　診察は、足を握りましたが、暖かいので心臓はちゃんと血液を送っ
ていることがわかりました。聴診器で心音を聞きましたら、猛烈な勢
いで打っています。2m程の所まで、行っておしっこをして、帰った所で
す。それにしては、強く打ち過ぎていますが、リズムは正確にうち、雑
音は聞こえません。
　これだけ歩くだけで、一大事のように心臓が打っていると云うこと
は、頭も心臓もチャントと連携が取れていることが分ります。

　私の場合は、聴診器で音を聞いていますが、直接、犬に耳を当て
て聞かれても聞こえると思います。

　何事も勉強です。長生きをさせてやろうということになりますと、自
分が飼っておられる犬のことは、獣医師より自分の方が知っているよ
うにすることが大切と思います。

続き　次回に。