寿命とは変な日本語です。寿命が尽きるというように使用します。これでし
たら、命のことです。よく似た言葉に、天寿があります。天寿を全うしました
というように使います。これも変な言葉です。動物ではあまり使いません。
人の場合、本人は全うしたと思っていないのに、見送った人が、天寿を全
うしましたと死亡通知文に書いたりします。このように使いますと、死亡し
た人は、天から与えられた命を十分に使って死亡しましたという意味にな
るのでしょうか? 
なぜ　このようなことを書くかといいますと、死にそうな17歳と18歳の犬を
続けて診ることになったからです。両方とも、立つことが出来なくなりまし
た。
　18歳の犬の方だけのことを書いてみます。
1ヶ月ほど前から、次第に食欲が無くなり、後ろ足が弱っていました。ここ
10日ほどは、食べなくて立てなくなりましたとのことです。頭も上げることが
できなくなり、夜になると泣いてばかりでご近所に迷惑をかけている。いろ
いろお話されましたが、ほとほと困っておられることが分かります。言葉に
は出されませんが、18歳ですから、皆さんでもう寿命だと考えられたようで
す。殆どの犬が16歳ぐらいで死にますから、あながち間違っているとは言
えないかも知れません。
　皮膚をつまんでみます。動物がつままれるのが嫌がるときは、少し脱水
(体の水分が不足している状態)が始まっています。もう少し、正確に見て
みます。つまんで皮膚を少し持ち上げます。皮膚は元の位置に戻ろうとし
ます。その時のスピードが、一瞬にもどりますと、正常です。どのようなス
ピードかは、自分の皮膚をつまみますと分かります。ゆっくり戻ると要注意
です。
　この犬の場合は、つまんだら皮膚は戻りませんでした。この状態になり
ますと、身体のあらゆる筋肉は動かなくなりますから、立てなくなります。
胃や腸の動きも活発で亡くなりますから、頭は食べないように命令しま
す。すなわち、食欲がなくなります。呼んでも反応は鈍くなります。体温も
下がって、手足が冷たくなってきます。瞬きも出来なくなりますと、死が近
いことになります。
　日に日に、死に向かって、状態が悪化していくのが、素人でも判ります
から、寿命だなという判断になります。
　さて、私がどのような治療をしたかは、次回にします。