皮膚病の兆候が現れたのは、今年の3月の終わりぐらいだったでしょうか? 
耳の後を痒がり掻くようになりました。掻きますと皮膚は赤くなります。片方であった
耳が両方とも痒がるようになりました。塗り薬を使って頂きますと、赤みも減り掻くの
も少し良いとのことでしたが、暖かくなってきますと、また、症状は悪くなりました。耳
の後の毛はなくなり、赤い皮膚がつるつるになりました。同じような症状が、首の下
に見られるようになりました。
　範囲が次第に広がっていきます。使用している外用薬は効いているようですが、
小康状態といった感じです。今度は首から胸にかけて脱毛と痒みです。
範囲が広くなりますと、使用している薬では追いつきませんので、薬を変えました。
広範囲に塗りやすく、費用も安く済む薬にです。ところが、この薬はアルコールが主
体のため、刺激が多いために、犬が舐める頻度が増えることになりますので、又、
別の外用薬に変えると共に、暑さとともに悪化しますので、シャープーを中心にする
ことになりました。
シャンプーを行って、一日はいいのですが、次の日には、痒がります。
　往診するたびに、私が言ったことは、あまり皮膚病は悪いように思いませんです。
悪くないと言いながら、内服薬も使用することになりました。
私の知っている治療方法は、すべて行いました。　8月には、毎日のようにシャンプ
ーをして頂きましたが、治りはしませんでした。
結局、はじめにお渡しした薬が一番良く効いていますので、治療はもとに戻りまし
た。患部が、はじめの15倍ぐらいに広がっていますので、薬を原価ほどにし、往診
料も診察料もなし、消費税もなしで対応しましたが、症状の悪化は止まりはしたの
ですが、治りはしません。しかし、皮膚はきれいなピンク色です。異常がないのに、
毛が生えてきません。皮膚病は、首の上下、左側の胸がすべて脱毛し、痒みは減
りましたが、理解困難なことばかりです。

　飼い主さんは、一層治してやりたくて一生懸命です。何度も悪くありませんから、
薬の中止を提案しましたが、薬がなくなるのが早くなり、往診の回数が増えます。内
服薬は中止し、皮膚関係の総合ビダミン剤のみにしました。

10月に入って、寒くなってきますので、シャンプーの回数を減らすようにしましたが、
頑張って家のお風呂で3日に一度されていました。風邪をひいたら大変ですから、も
っと、減らすようにしました。
　10月5日頃だったと思います。外用薬を中止することにしました。内心、そのことに
よって病気が悪化すると困るなと思っていましたが、時々、電話をしますと、悪化は
していないというので、総合ビダミン剤以外は、すべて中止しました。20日に往診し
ましたら、首の下が、一部赤くなって毛が生えていない外は、全部生えてきていまし
た。

結論、一生懸命外用薬を塗りだしてからがいけなかったことになります。犬は、そ
の薬を取るために、必死で舐めていました。舐めても舐めてもこれでもかと薬を塗
られるものですから、きれいになるまで舐めました。それが刺激になって別の皮膚
病が発生していたことになります。
　ただ、訳が判らなかった点は、舐めることが出来ない耳や首の上はどうして、毛
が抜けたかと云う事です。
これも判りました。このお家は、親子の犬が飼われていました。皮膚病になったの
は、子供の方です。親が世話やきで、薬を塗られると一緒になって取り除こうと舐
めてやっていたことになります。
治療をすればするほど悪くなった例です。