少し、雪がちらつく中を、チワワが抱かれてやってきました。2週間ほど前から、
咳をしている。少し、食欲が落ちてきました。これが飼い主さんのお話です。
次が私の質問です。今日はたべましたか? 食べました。　元気はどうですか? いつ
もよりは元気がありません。目で見た所。　呼吸、まずまず。毛並み、まずまず。　
触った所。耳と喉の下を触る。腫れなし。
身体を触る、暖かさは少し低め。足の先は冷たい。手に少し水を感じる。質問。
今、歩いてきましたか? 
車を降りてから少し歩きました。質問。咳は朝だけですか? 昼間もしますか? 一日
中しますか? 一日中します。質問。食べ物が変わりましたか? なにか新しいものを
買いました? 
　今度は聴診です。肺異常なし。心臓、心音の大きさ、少し聞き取りにくい。リズム
が悪い。雑音あり。
　咳は心臓が悪いためでしょう。といいながら、腹部の触診をしようとしながら、薬室
へいきました。なぜ、行ったか今でも思い出せないのですが、出てきたら、頭傾いた
のに気がつき、すぐに表の酸素ボンベのコックを開きにいきました。戻ると犬は立
っていることができず、崩れるように倒れました。
　酸素吸入と手で心臓マッサージをしました。肉眼では呼吸は止まっているようでし
た。呼吸中枢を刺激する薬と強心剤の注射をし、手を押したり離したりしていると、
呼吸がはじまりました。しかし、暫くすると又、呼吸が停止したようですが、聴診器を
当てる間がありません。20分ぐらいして、一層、呼吸の状態が良くないので、追加
の注射をしました。
　お母さんと娘さんの必死の呼びかけに応えることもなく、その後、20分ぐらいで死
んでしまいました。

9歳でした。

咳は、心臓が悪いために、肺水腫という状態があったようです。肺の空気が入って
いくところに、水分が貯留するようになっていたはずです。咳をする。足の先が冷た
いだけで心臓—肺水腫と連想できます。呼吸の状態がそれ程悪くなかったの
で、まさか、診察台の上で死ぬとは思いませんでした。いつも、肺水腫と診断したと
きは、死ぬときは、2時間でしにますからと説明していますが、このような事ははじめ
てです。
私はいつもですと、強心剤と利尿剤の注射を打って、3日分のお薬をお渡しして帰っ
ていただきますが、これからは、このような事があると説明して、注射をした後も10
分ぐらいは病院にいてもらわないといけないと思いました。そうでないと、家に帰る
途中で死亡することもあるなと思いました。

今日は、私の反省を書くつもりで書いたのではありません。肺水腫になり、自分で
ようよう解決するの症状を繰り返していた犬が、暖かいお家にいたのに、小雪降る
中を、僅かとは言え、歩いてやってきた所で、心不全を起こしたのだと思います。今
年になって、寒さの所為と思われる犬が外に、もう一匹ありました。

食欲あり、散歩も行く、咳をする、足の先が冷たい。　この4つが揃っていますと、注
意が必要であることを知ってください。(血液の検査をしても判りません)

散歩は、暖かくして行ってください。　12歳過ぎた犬は、家の中に入れてやる。不可
能でしたら、暖かいものを敷く、カイロ、湯たんぽを入れてやるなどの配慮が必要で
す。