しんちゃんの病名
又もや 随分開いてしまいました。
《しんちゃんへの手紙》覚えておられますか?
読者の方から、元気なのに、どうして、安楽死をしたのですか? 病名はなんです
か? と、メールを頂きました
以下、そのときの返事です。 8月4日付けで送信しています。
大橋です
私は 普通の獣医師ですのに、えらそうに、病気の相談にのっています。
大した役にもたちませんので、せめて、早く返事をすることで駄目な所は
許してもらっています。
従いまして、あなたの質問は、気になっていましたが、父が１２月から入院
していますが、とうとう明日か今日かの命で、昼も夜は側で付き添っていま
す。
という言い訳をしましたところで、簡単に、返事を書こうと思っています。
しんちゃんへの手紙は、600字に限定された文章です。病気の内容をはじめ
に書きましたところ、どうしても1200字になり、また、悲惨な無いようですので、
「しんちゃんへの手紙」を書かれた飼い主さんの優しさをおつたえするのが、
目的です。
しんちゃんの病気は、昨年の一月から始まりました。
便が出ません。
これを病名ではなんといえばいいのか 私は知りません。便秘？ これは、
便の出ない状態をいうので、病名ではありません。
腸閉塞？ 便秘よりは病名に近いですが、腸が詰まった状態を言います。例えば、
石を飲み込んで、詰まっている。癌ができて詰まっている。前立腺がはれて、直腸
を圧迫して詰まっている。
腸がねじれて(腸ねん転) そこで詰まっている。私は40年もしていますから、本に載っているの
ではなく、上に書いたことは、全部経験してきました。
こんな便が出ないぐらいで、安楽死をしたのかと思われるでしょうが、普通の便秘
ではありません。
しんちゃんは、30キロぐらいありますから、毎日、1キロ近くの水分と食べ物を食べ
ます。一週間もでないと、お尻がおさるのお尻のように、真っ赤になり、毛は抜けてテカテカに
なってきます。
その大きさたるや、なんと表現したらいいでしょうか？ 拳2つ分ぐらいでしょうか？
お尻の穴は、10円玉大に開いたままです。
食べている間は、来院されませんが、たべなくなって、2〜3日たっても、しんちゃ
んは、私のところにくるのは、大喜びです。
しかし、私が、お尻をみようとしても見させません。ご夫婦で抱えてもらっても絶
対見せません。
仕方なく、全身麻酔をかけます。
猫の便秘ですと、石のように硬いことはありますが、たいして硬くありません。兎
に角、一つの便が大きいのです。お尻の穴より大きいために出ないことになります。
一回目は、取れるだけとって、下剤を3日分ほどお渡しして、これで解決ですと帰っ
てもらいました。
すぐに、やってくることになりました。長い獣医師生活ですが、あまり、犬が便を
しているときに、肛門がどれぐらい開いているか観察したことがありません。出た
便は、大きいなと思ったことはありますか、出てくるときの肛門が大きいなと思っ
たことはありません。
ということは、便は、肛門を出る前は、直腸で結構大きいのですが、でる瞬間は、
細くなって出るのだと思います。そして、出たあとは、直腸の中にあったときと同
じ大きさだと思っています。
10円大の穴であれば、十分だと思いますのに、何故でないのかわかりません。
全身麻酔をかけるたびに、全身の痙攣が5〜6回も起こります。下手をすると死んでしまいま
す。
やはり、肛門が小さいのであろうと言うことになり、肛門の上を切って、肛門をお
おきくする手術をしました。下も切りました。肛門をおおきくする試みは、3回しま
した。早いときは、2週間でやってきました。
下剤の量を次第に、増量しました。
しんちゃん、庭から、玄関の中など、自由においてもらっていましたが、大下痢
で、家中、しんちゃんのウンコさんだらけでした。しんちゃんのお尻も便だらけで
す。あまり、ひどいので、下剤をへらしますと、てき面です。また、同じ状態にな
ります。
便が少なくなるように、ドッグフードは減らしました。生肉をおおくしました。
少なくとも、一ヶ月に一回はやってくるようになりました。
直腸であまり、大きな便の塊が出来るために、お尻の筋肉は、その便で押しやられ
て、筋肉がなくなるようになりました。袋状になった部分の皮膚の切除を試みました。
同じ治療は一度もしていません。必ず、今度はこの手でやってみようと改善をしま
した。痩せていたしんちゃんは、はじめより、肥えて、元気にもなりましたが、お
尻は駄目でした。
直腸の切除を考えましたが、おとなしい犬であれば、いいですが、元気者だけに、
手術のあとの処置をするたびに、全身麻酔が必要です。(そのたびに、痙攣)やって
くるときは、悲惨な状態でやってきます。近所数件先まで、しんちゃんがべん
を気張るたびに、その痛さで悲鳴を上げるのです。そして、肛門から、出血が
はじまり、血だらけになってやってきます。
最後から、3回目のときに、「さあ、しんちゃん かえるぞ」と明くる朝、見にいき
ますと、腸がでたままで、血だらけでした。
もう一度、全身麻酔をかけて、入れなおしました。
そして、最後のときは、 １０センチはでていたでしょうか？
修復を試みましたが、戻りませんでした。
出ている直腸を切り取ろうかと言うことになりましたが、可能性として、きっと、
同じことの繰り返しになるであろうと考えました。
普通は、ある程度の大きさになると、排便を催す仕掛けになっているのに、しんち
ゃんは、それを判断できないのだと思います。そのために、便で圧迫された直腸は、
炎症をおこし、ずるずるにただれてきます。そうなると痛いものだから、
きばらないのだと思います。
大して、硬くも無い便なのに、あまりにも、大きすぎて出ないのだと思われます。
ここに、書ききれないほど、大変な看護のほか、飼い主さん、三人のうち、二人、入
院。しんちゃんの世話をしておられる方が、ぎっくり腰であるけなくなったりで、
もろもろのことを判断して、安楽死を選択しました。
しんちゃん 堪忍してなと 声をかけて。
|
