子猫とカミナリと雹
２０日ほど前に、大阪の北部一は、激しい雷と雹に見舞われた。夜の１２時前後で
ある。寝間に入ってはいるものの、あまりの激しさにボロ家は壊れるのではないか
と思われるほどで眠れず。隣で寝入っている家内が一向に目を覚まさないことから
推察すると、意外に寝ているものにとっては心地よい音だったのかもしれない。
はやく眠らないと寝不足がひびくと、自分で言い聞かせながら目をつぶっているう
ちに、次第にカミナリも遠くできこえるようになり、いつの間にか寝てしまった。
起きたときには、雨はあがっていたが、その後、降ったりやんだりの天候がお昼ま
で続いていた。前夜の睡眠不足が影響したわけでもないが、いつものように、昼寝
を楽しんでいると、「お父さん、急患ですよ」と起こされた。
ほどなくしてやってきたのは、私の小さな手でも乗るぐらいの子猫でした。庭に
倒れていたとの事で、拭いては貰っていたが、まだ濡れているし、身動き一つせ
ず、体は冷たくなっていた。いつものごとく順番に診察・体温は体温計が反応しな
いので、34度以下なのだろう。一番にすることは、やはり体温をあげてやることだ
と、ドライアーで乾かしながら、診察・治療と進める。体が小さいだけに、直ぐ
に、体は乾いたが、猫は動きもしません。暖房器具は寒がりのわたしでも、すべて
なおしてしまいましたので、カイロをもんで、タオルの下に敷きました。歯はそろ
っていますので、私の予想では、数時間で動き出すと思いましたが、何回覗いて
も、微動だにしません。こんな状態は丸2日つづきました。
３日目になりまして、座ることができるようになり、牛乳を飲み、その夜には、少
し食べました。翌日はどんどん食べ、安心。
ところが、全く動く気配がありません。次第に、前足は力がはいるようになりまし
たが、後ろ足は、両足を前にのばしたままで麻痺の様子です。とはいうものの、
時々、足の先の方は動くのですが、立つ様子なし。連れてこられた方に何がしの原
因と今後の予想をお話しなくてはなりません。２日も意識がなかったこと、立てな
いということから、やはり脳がやられたのであろう。このあたりが長年獣医師を営
業した者としては、発想が貧弱です。そこで、候補に挙がったのが、昨晩の「雹」
です。テレビニュースで報道があっただけに、夢うつつで聞いたすさまじい音の雹
は、我が家の物干し台のビニールの波板を貫通して、その破片が一杯でした。その
破片の大きさは、2.5ｃｍ×7ｃｍぐらい。手で破片を曲げてみようとしたが曲がら
ない方さでした。これが頭に当ったら、脳震盪をおこすであろうと考えて頭の毛を
掻き分けてみたが、怪我らしき跡は見えなかった。次に考えられることは、体温が
下降したまま、仮死状態で長時間いたために、脳がやられたのであろうと推察。Ｃ
Ｔスキャンもなし、脳波をはかるでもない私としては、精一杯の診断で、今後の方
針は、リハビリあるのみとなりました。
ご家族で見舞いにこられた仮の飼い主さん(付き合いは私の方が長い)は、この哀れ
な姿をみて、家族会議の末、できる限りのことをしてください。手術で治るもので
あれば、してください。治るまで入院して治療してくださいとの電話を頂戴した。
いつまで経っても上達しない獣医師の私としましては、リハビリあるのみと、仮に
頭の中に異常が発見できても、手術をようしないことを伝えて、家内と毎日、立た
すことから始まりました。一日で、立てるようになり、3日目には、ウサギのように
後ろ足を揃えて歩くようになりました。一時は、我が家でずっと飼ってやらないと
仕方がないなと思っていましたが、どうやら、飼っていただけそうですし、うごき
だしますと、そのしぐさが可愛らしく飼ってやろうという方が、3組も名乗りをあげ
られるほどになった。
現在は、走り回り、おしっこの躾けをしている最中です。
余談ですが、雹と事件がありました朝、フイラリアの薬を取りに来られた方が、暇
で暇でと言われます。穴の開いた波板は取り替えないことには、洗濯物が濡れます
ので、修理を依頼しようと見積もりをお願いしました。
１６万円でした。びんぼー獣医は、イッペンにしないの判断を下しました。そし
て、私は家内に脚立をもたせて、ガムテープを張りました。
梅雨にまにあいまして、今のところ漏りません。いつまでもつことやら。
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